

SOLD OUT
岩根卓弘 編
2022年 能美舎
B5判変型 / 92ページ
1980円
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【出版社より】
私設図書館『江北図書館』は、かつて北國街道木之本宿として栄えた人口約1万人の町にある。明治35年、地元出身の弁護士が「郷里の若者に読書の機会を」と私財を投じて開設した文庫を前身に、明治39年に地域の人々の協力を得て設立され、以来120年に渡り地域で支えてきた。いまも住民たちの交流の場、情報発信拠点としてあり続ける図書館の魅力を「歴史」「建物」「蔵書」を中心に紹介。図書館を愛する住民たちが史料を紐解き、蔵書を調べて編纂した。第4回野間出版文化賞特別賞受賞。
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【またたび文庫の感想文】
滋賀県・琵琶湖の北側・長浜市にある「江北図書館」。
そこは、全国で三番目に古い私設図書館である。
個人や地域の意思によって
120年続いてきた図書館の歴史。
現在の取り組み・これからについてもきれいにまとめられている。
総じて、愛をもって作られた本なんだなぁ。。。
凝ったデザインやテキスト・写真を眺めつつそう思う。
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創立者は、杉野文彌氏。(1865−1932)
弁護士を目指して上京した彼は、図書館に通い勉学に励んだ。
買うと高価な専門書を読める場所。彼にとってありがたい存在だった。
そんな思い出をもとに、郷里に図書館をたてる構想を描く。
30歳ごろから、
弁護士としての収入で地道に本を集めはじめた。
そして1902年(明治35年)、杉野氏37歳。
蔵書3000冊をもって「杉野文庫」がはじまった。
5年後の1907年、杉野文庫は財団化し
「江北図書館」という名を冠するようになった。
当時は図書館が少なかった時代。
かけだしの私設図書館は、
小学校への巡回図書などの普及活動に取り組んだ。
当初1万6千人ほどの利用者だったのが
5年後の1912年には4万3千人へと増加した。
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戦争による経済打撃や、戦後復興における図書館法の成立、
70年代の文化復興運動の機運。
社会情勢の流れを一身に受けながら、
私設図書館という形は続いてきた。
先駆的な図書館が、いまでは古い部類の図書館になっている。
変わらず続く存在が、実は一番変化している。
それって、すごくない??
という話を先月、友達としたところだったなぁ。
”文化とは、思想とは、建築である。
ひとつの建物が立つということである。”
昨日の投稿で触れた小林秀雄がよく言っている言葉。
江北図書館は、それをよく体現しているのだろう。
建物をつくるのは一人ではできない。未来へと続けていくためには一人の一生じゃ足りない。それはきっと魂を繋いでいく行為。
古くてあたらしいものの在り方を、この場所から学ぶことができる。
実際に見に行きたいなぁ〜〜。
ぜひ。
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