

SOLD OUT
光嶋祐介 青木真兵 著
青木海青子 画
灯光舎 2023年
15 x 1.7 x 18 cm
ソフトカバー 260ページ
¥2420
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私設図書館「ルチャ・リブロ」を運営する青木真兵氏、 建築家の光嶋祐介氏による往復書簡。
ふたりは2011年ごろ、内田樹氏の運営する道場「凱風館」のコミュニティで出会う。
2014年に青木さんが立ち上げた読書会やラジオなどで、
なんども対話を重ねている関係性である。
*
当初わたしは本書について 近い価値観を補強しあい、
世の中にある提言をするような内容をイメージしていた。
けれど少し読みすすめてみると、 全然違う面白さが見えてくる。
”僕にとって「シュートを打つ」とは、
社会的な立ち位置や周囲からどのようにみられているかを一旦脇に置いておいて、
その枠からはみ出したとしても「やらねばならないときがある「言わねばならないことがある」、
そう感じたときに行動を起こすことを意味しています。”(p3)
”大枠の価値観では一致している僕たちですが、
先ほどみた思考の違いなど、
異なった部分を明確にしていけたらおもしろい。”(p18)
「違う」ことについて いかに心地よく認めあうか?
それが、本書の主題のひとつなのであろう。
*
「建築しつづけることは本当に必要なのでしょうか」 と、
青木さんは光嶋さんへの投げかける。
YESと即答した光嶋さんは、 自らの建築設計における思想について書く。
それは、「今を生きる人が、自然とどう折り合いをつけて心地よいくらしを営むか?」という問いに基づくもの。
「商品建築」と「生きるための建築」の区別に気づいた青木さん。
人間が抱いてきた自然観の方へと話は展開していく。
自然をコントロールしようとする近代以降の思想と、現代人の心の病の関連について。
異なる仕事をもつふたりは 同じ言葉でも、違う意味にとらえていることがある。
認識のズレをおもしろがりつつ、 丁寧に確認してふくらませ合う作業の痕。
それが、ふたりの対話として繰り広げられる。
*
彼らは互いに 言いたいことを言い合っているだけ、のようにも見える。
但しその中で、 やんわりとまとまった思想が”自然と”できあがってくるのだ。
方向性が予め定まっていると生まれない、風通しの良い空気感。
「良い対話」の根底にはリスペクトがある。
回数を重ねるごとに、お互いの領域が浮かびあがる。
境界線を意識しつも飛び越えてみたり、を繰り返す。
そうやって関係性が熟していくのだろう。
不思議な居心地の良さと学びのある読書体験です。 ぜひ。