

奈倉有里
2023年 創元社
160ページ
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ロシア文学研究者・翻訳家の奈倉有里さん。
日本人として初めて、ロシア国立ゴーリキー文学大学を卒業した。
代表的な仕事は、『亜鉛の少年たち』、『赤い十字架』の翻訳。
著書『夕暮れに夜明けの歌を』にて
ウクライナ戦争下におけるロシアの状況と、自らの心情を描いたことでも知られる。
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奈倉さんは、どのようにしてロシア語と出会い、
学びつづけてきたのか?
本書には、彼女の語学にたいする姿勢が
経験談を通して書かれている。
雪のある風景や、トルストイへの憧れからはじまったロシア語への興味関心。
まなびつづける中で、挫折しかけることもある。
その時に覚えていった、寄り道的な学習法。
言葉を学ぶことは、「あたらしい子供時代」の思い出をつくること。
そう言ってくれた語学の先生について。
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ずっと「ゆるやかに楽しそう」な奈倉さんの学び方が素敵だなぁと思った。
「目的をもたず、気分に左右されながら学ぶ」
個人的には、彼女の自然なスタイルがとても好きだ。
思えば学校の授業はわかりやすい目的がある。(テストや受験、その国への旅行、とかね。)
その目的が自分にフィットしなかったら
「意味ないじゃん!」とあきらめてしまう。
奈倉さんのように、「学ぶことそれ自体がだいたい楽しい」の人は
やめる理由もないのでずっと続けられる。結果的に上達する。
「白地図を歩く」という本書のタイトルの意味は
ゴール地点なき道をゆく楽しさを暗示していたのだなぁ。
おしゃべりしている感覚で読み進められる、
気軽な文体も面白い。
ぜひ。