

SOLD OUT
東畑開人
誠信書房 2015年
A5判 ソフトカバー
302ページ
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”野の医者”とは、
現代の医療の本筋からはずれたところで
病んだ人を癒す仕事をする人たちのことを指す。
カウンセラーと占い師の中間のような存在である。
沖縄といば、「ユタ」という呪術を使う女性が今もいるのは有名なこと。
ところが本書では、
ユタよりも「怪しそう」(一歩間違えると高価な壺を買わされそうな感じ)な、
ヒーラーたちに焦点が当たる。
臨床心理士の著者・東畑さんは
彼女らの治療を受け、
その人生について話をきいてまわる。
本書はその成果をまとめた、少し笑えるドキュメンタリーである。
*
グシケンクリニックでは、
「統合失調症も、簡単になおる」
「全ては地球の問題につながる」という謳い文句を発信してる。
「”苦玉”が胃にあると胃癌に、心にあると心の病になる。だからこれを失くせばいい」
と、グシケン先生はあたりまえのように話す。
いかにも、怪しく、現代の医学では通用しない論理である。
ある日、東畑さんがカウンセリングを担当していた患者さんがぱったり来なくなった。
事情を聞くと、長年苦しんでいた妄想癖が、グシケン先生の「治療」でなおったのだとか。
東畑さんはそのことに衝撃をうける。
現代医療よりも、ヤブ医者まがいの治療が効力を発揮することがある。
一見怪しい彼らの「治療」が
科学では説明しきれない「こころ」存在の理解を深めてくれるのでは?
そんなふうに、ピンときた東畑さんは
沖縄でフィールドワークをはじめる。
本書は東畑さんの経験が
ドタバタ劇のような味付けで、ユーモアたっぷりに描かれている。
*
沖縄出で生まれ育った身として、感覚的にわかる部分も多い。
本書によくでてくる「マブイ(魂)」の話や
祖先が強いこと、
色々と思い返しながら読みすすめた。