

SOLD OUT
アノニマ・スタジオ
2020年
四六判 ハードカバー
300ページ
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言葉は、何らかの思考や感覚をかたちにし、
共通のイメージを思い描く役割をはたす。
一方で言葉は、掬いきれない、曖昧な部分を切り捨てる。
病気、健康、医療、身体、心。
医療を取り巻く言葉にもつイメージ。
稲葉さんの文章は、それらをひとつひとつ解きほぐしながら進んでいく。
自分の内側から湧き上がってくるものを、
一時的に、外の言葉を借りて表現しているようで、嘘がない。
”素晴らしい場の中にいると、心身がリフレッシュされて生まれ変わったように感じる時がある。
(中略)そうした経験は誰にでもあるはずだし、個別で些細な事例から健康の本質を深めていくことこそが、
多様性を受け入れ変化に対しても柔軟に対応できる医療の場へ育っていくことに繋がる。
どんな人でも自分の中に働く「いのち」の力と主体的な関係性を結ぶことができる「いのちを呼びさます場」になるだろう。
個人の心や体の健康を考えることは、場やシステム、社会や地球の健康を考えることに通じていく。(p.40-41より)”
稲葉さんのいう「いのち」とは、
わたしたち個人と、個人をとりまく環境全体をあらわすのではないか。
体も心も、魂も生命も、
生き方も、人間関係や社会や環境問題も、
全てひっくるめた、「いのち」。
病気は悪いもの、治ったら健康、という「医療」的な二元論も受け入れる。
全ての中にいのちが、いのちの中にすべてが、あるということを深いところで認識する。
そんなダブルスタンダードについて考えさせられる一冊です。
ぜひ。