

仲正昌樹 著
共和国 2021年
四六判 ハードカバー
236ページ
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【出版社より】
金沢の個性派書店「石引パブリック」で開催され、各回満席だった全11回の連続講座を全3巻に収録。本書はその第2巻め。ギリシャ古典からニーチェ、アーレント、ベンヤミンらの概念を駆使しながら、現代社会をわかりやすく説く。
本巻[青版]には、「AI/科学技術」、「ネットと文明」、「演劇」(ゲスト=あごうさとし)、「芸術」をテーマとした4講義分を、質疑応答まで完全収録!
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【またたび文庫の感想文】
哲学シリーズで思い浮かんだのがこちら。
2019年、金沢市の書店・石引パブリックで開催されたイベント
「哲学JAM」。
金沢大学法学類教授の仲正昌樹先生による
哲学解説とオープンディスカッションが人気を博していた。
本書は、全11回にわたり開催されたうちの第4講〜7講を書籍化した一冊である。
主なテーマは二軸、「科学技術と哲学」、「芸術表現と哲学」。
マスコミでよく取り上げられる話題について、西洋哲学の文脈をひきながら議論を進める
AIやSNSの問題、高等教育における文系/理系、道具を使うこと、可変的な「人間」の定義について。
解釈学のディルタイ、数学者のラッセル、ライプニッツ、
動物倫理のピーター・シンガー、現象学のフッサール。
あらゆる名前や概念を浴びせられてついていくのに必死。(いや、ついていけてない)
個人的には、そのくらいのハードさが楽しいんだけども・・・。
ある参加者からの質問が印象的だった。
「先生はどういう目的で哲学を勉強されているのですか?
哲学をしているときに問題解決している感覚があるのでしょうか。
あるいは考えていること自体が楽しいのでしょうか。」
「後者です。考えていること自体が楽しいですね。
哲学的な問題を解決してすっきりするなんてことはありません。
そういうふうに思っているとしたら、危ない兆候です。」
(p.61より)
なるほど。この人の追求には終わりがないのだ。
倫理学を学びたいかたには面白く読める一冊です、ぜひ。