



谷川俊太郎 著
ブルーシープ 2023年
560ページ
18.2 x 25.7 cm
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【またたび文庫の感想文】
詩人・谷川俊太郎の名をしらない人はいないだろう。
1931年生まれの谷川俊太郎は現在91歳。
哲学者の谷川徹三を父にもつ彼は、三好達治に見出されて「文学界」でデビューした。
処女作「二十億光年の孤独」が出されたのが1952年。もう70年以上にわたりことばを仕事にしてきた人である。
本書は、そんな谷川俊太郎が手がけた絵本から、172点についてまとめた一冊である。
それも本人による詳しい解説つき。
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個人的に気になったのは、アイヌの民話を題材にした『パナンペのはなし」』について。
ある表現が、アイヌの伝統と違う風に解釈される可能性がある。そんな抗議をうけたのだそう。
わらべ歌や民話で使われる表現の中には、今では「差別」とされるものもある。
それらのことばをどう扱う?現代の作家が向き合う問題である。
「伝統だから」と残すのか、「傷つく人がいるといけないから」と言い換えるのか。い当時のことばの情緒をくずさない範囲でどう表現するのか。
”言葉をいくら言い換えても差別はなくならないというのも本当だと思う。
ー(中略)ー
だからといって、たとえば「ジャップ」や「ニガー」みたいな言葉を残しておいていいかというと、それはやっぱり違うことばにしたいと思いますよね・・・”
(本文193ページより)
抗議をした当人たちと対話を重ねた経験をもとに、
差別語表現について語る谷川俊太郎。
じぶんの表現と、社会への影響力、個人にあたえる力、それぞれのバランスをみつめつつ仕事をしてきたんだろうな。
大御所の正直な葛藤があらわれていてグッときた。
とはいえ、変に重くない言葉づかいをしているのがまた素敵だなぁと思った。
ぜひ。