



岸 政彦 著
勁草書房 2018年10月
四六判 ハードカバー
352ページ
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【出版社より】
人生とは何か──鉤括弧を外して再び語るために
沖縄戦の最中に手渡された手榴弾と、聞き取りの現場で手渡されたマンゴー。「こちら側」と「あちら側」の境界線を越えて行き来する、語りと記憶と「事実」。ストーリーの呪縛から逃れ、孤独な人生について、過酷な世界について、直接語り合おう。「約束としての実在論」へ向けた、ポスト構築主義の新しい生活史方法論。
私たちは、頼んでもいないのに特定の時代の特定の場所で生まれ、あらかじめ決められた狭い条件のなかで、それでもせめてよりよく生きようと、必死で暮らしている。生活史を聞き取ることで私たちは、私たちの人生のもろもろが、ひとりだけの問題ではなく、社会的な問題であること、あるいはまた、社会的な問題は、それぞれひとりひとりの人生のなかで経験されることに気づく。私たちは、歴史と構造によって、私たちの人生の多くの部分を規定されてしまっている。そういう意味で私たちはひとりきりではない。そして私たちは、そうした歴史と構造のなかで、それぞれひとりきりの人生を送らなければならない。そういう意味で私たちはひとりきりである。
――本文より
【目次】
はじめに
マンゴーと手榴弾─語りが生まれる瞬間の長さ
鉤括弧を外すこと─ポスト構築主義社会学の方法
海の小麦粉─語りにおける複数の時間
プリンとクワガタ─実在への回路としてのディテール
沖縄の語り方を変える─実在への信念
調整と介入─社会調査の社会的な正しさ
爆音のもとで暮らす─選択と責任について
タバコとココア─「人間に関する理論」のために